いつもご高覧ありがとうございます。ちょっと仕事が立て込んだり体調を崩したりして更新を怠っていました。
ダラダラと続いている「独身女2.5人の井戸端会議」、まだあと数回続くのですが、今日はどうしても書きたいことがあり、一旦連載(?)を中断して記させていただきます。
日ごろ、なるべく政治的な文書は書かないようにしているのですが、今回限りはその自らに課した掟を破って書くことにしました。
米大統領選挙を巡る話ですが、親トランプの方にとっては愉快な話ではないと存じます。そのような方はお立ち去りなられることをお勧めいたします。
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私にとって米大統領選は、対岸の火事である。そりゃそうだ、選挙権もないのだから。
もちろん好き嫌いはあって、真っ赤なネクタイの変な髪型のオッサンが好きか嫌いかと聞かれれば虫唾が走るほど嫌い、ではある。
ただ、アメリカ合衆国大統領が日本の総理に比べたら強い権限を持つとはいえ、極端な暴走はできないような政治システムになっていて、そこは中国やロシアや北朝鮮と異なる。
「もしトラ」とか「ほぼトラ」だとかかまびすしいが、私の日常は、かのオッサンが再選されても1mmも影響を受けないだろう。株や為替などやっていればそう安穏ともしていられないのだろうが、あいにく私はその類のマネーゲームに手を出したことはない。
だから、今回の大統領選は狙撃事件があったり、現職大統領がレースから降りたり、波乱万丈ではあるものの、その目まぐるしい展開から受ける感想は、ソープオペラを観るそれとさして変わりは無かった。つまり野次馬的関心の域を出なかったわけである。共和党副大統領補の"childless cat ladies with miserable lives"というコメントを目にするまでは。
それを読んだ瞬間に頭に浮かんだのは「これは許し難い」という思いだった。
少し解説をすると、cat ladyはそのままの意味は「猫をたくさん飼う女」だが、Cambridge dictionaryによれば"a woman who lives alone and is considered to be slightly strange"=「孤独でいささか変わり者と見られている女」 とある。独身で、人付き合いより猫を愛でることを好む変わった女、ということなのだろう。
(ちなみに私は現状一人暮らしだが、猫はアレルギーがあって飼えない。好きだけど)
childlessはchild(子)に「~を持たない」「~が無い」という意味の接尾辞lessが付いたもので、「子無し女」で良かろう。昔風に言えば「石女(うまずめ)」。女の最大(そして唯一)の価値は子を産んで世継ぎを残すことだったから、それが出来ない女は無価値だったわけで、それで石女。ひどい当て字だ。
そして最後にあるmiserableは形容詞で「惨めな」という意味。
つまり、かの副大統領候補のコメントは、「惨めな人生を生きる、子無しの風変わりな女」という意味だ。
では、それがどういう文脈で語られたかと言うと、FOXニュースのインタビューでHarris現副大統領 やButtigieg 運輸長官、そしてOcasio-Cortez下院議員の名を挙げ、
「米国はchildless cat ladiesに牛耳られている。こうした女性たちは自分の人生や自身のこれまでの選択に惨めな思いをしており、国も惨めにしたいと思っている」と言ったというのだ。(CNNニュースによる和訳)
私は不妊治療を続けてきたが、数年前に諦めた。(しかし、往生際悪く、卵子凍結はしている)
当時、毎月生理になる度に涙に暮れた。(というか正確には生理が来る直前に基礎体温がストンと下降するので、その段階で分かるのだが)
毎月毎月、「ダメ女」「役たたず」の烙印を押されている気がした。まさにmiserableな気分だった。
街で赤ちゃんを抱いている女性やベビーカーを押すお母さんを見ると、「なぜ他の人ができることが私にできないのだろう」と落ち込んだ。
何よりも辛かったのは高校や大学の友人に出産祝いを送るために三越や高島屋のベビー用品売り場に行くことだった。可愛らしいスタイ(よだれ掛け)を手に取り、とめどなく涙が溢れてトイレに駆け込んだことを、私は多分、死ぬまで忘れない。
母には泣いて詫びた。「ごめんね、孫を抱かせてあげられなくて」
すると母は目尻を拭いながら「謝る必要があるものですか。こんな素晴らしい娘がいればそれでお母さんは十分」と言い、それを聞いて堪えきれずにおいおい声を上げて泣いた。
それが「産んだ覚えのない長男」である主人の「良いじゃないか、赤ん坊なんて居なくても。代わりに俺がいる」という謎の発言を聞いて吹っ切れた。(2人で幸せに生きよう、くらい言ってくれたら満点だったのだが)
そんな過去を持つ女性は、彼の地にだってたくさんいるだろう。民主党の女性議員が嫌いなら、なんの修飾語も付けず、単に「ハリスやブティジェッジやオカシオコルテスがこの国をダメにしてる」とだけ言えばよかったのだ。何故そこに「子のない惨めな」という形容詞句をつける必要があったのか。
もし、今度の大統領選がハリスさんの逆転勝利に終わったら、オッサンは舌禍を引き起こした当人に「You′re fired(お前はクビだ)」と言いたくなるだろう。(その時は既に遅いが)
一度口に出した言葉は、「あっ、まずい!」と思っても取り返しがつかない。今頃、髭面の若き副大統領候補はほぞをかんでいるに違いない。
これから11月まで、私はJ.D.Vanceが副大統領にならないよう、毎日祈りを捧げるつもりだ。
コメント
コメント一覧 (1)
優奈さんのブログはハイカルチャーな内容なのでいっつもビビっていて、今回は独身の私には特に遠い世界な感じですが、共感したい気持ちです。お母さんのところウルっとしました。
『赤ん坊なんて居なくても。代わりに俺がいる』のセリフに少し笑ってしまいました。
misato20aug
がしました